LoRaWAN 用語辞典
LoRaWANの用語を、実務で必要な粒度でまとめました
クラスA/B/C、OTAA、ADR、AS923——LoRaWANの資料には英略語が並びますが、意味が分かっても「で、案件でどう効くのか」は書かれていないことがほとんどです。
この辞典では、KNX / DALI / LoRaWAN の設計・施工を手がけてきたスマートライトの立場から、用語の定義に加えて「実務上どこで問題になるか」まで書いています。全52語、読み方つきです。
全52語
読み方つき
更新 2026年8月13日
読み方つき
更新 2026年8月13日
基礎用語
- LoRaローラ
- Semtech社が開発した無線の変調方式(物理層)そのものを指します。チャープスペクトラム拡散(CSS)という方式を使い、微弱な電波でも遠くまで届くのが特徴です。LoRa は「電波の飛ばし方」であって、通信のルールではありません。
- LoRaWANローラワン
- LoRa の上に載る通信規約(MAC層〜ネットワーク仕様)で、業界団体 LoRa Alliance が策定しています。デバイスの参加手順、暗号化、ゲートウェイとサーバーの役割などが定められています。「LoRa対応」と書かれていても LoRaWAN 準拠とは限らないので注意が必要です。
- LPWAエルピーダブリューエー
- Low Power Wide Area の略。省電力・広域・低速を特徴とする無線の総称です。LoRaWAN のほか Sigfox、NB-IoT、LTE-M、Wi-SUN などが含まれます。
- チャープスペクトラム拡散チャープスペクトラムかくさん(CSS)
- 周波数を時間とともに滑らかに掃引(チャープ)して情報を載せる方式です。ノイズに強く、受信感度が-130dBm級まで取れるため、都市部でも数km届きます。LoRa の到達距離の正体はこれです。
- サブギガ帯サブギガたい
- 1GHz未満の周波数帯の総称。日本のLoRaWANは920MHz帯を使います。2.4GHz帯(Wi-Fi・Bluetooth)より波長が長く、障害物を回り込みやすいため遠くまで届きます。
- エンドデバイス
- LoRaWANネットワークの末端にあるセンサーやアクチュエータのこと。単に「デバイス」「ノード」とも呼びます。電池で数年動作するものが主流です。
日本の電波規制
- 技適ぎてき(技術基準適合証明)
- 電波法にもとづき、無線機が国内の技術基準を満たすことを証明する制度です。正確には「技術基準適合証明」と「工事設計認証」の2種類があります。技適マークのない無線機を国内で使用すると電波法違反となり、罰則の対象です。海外製LoRaWAN機器を導入する際の最重要チェック項目です。→ 技適一覧はこちら
- AS923エーエスきゅうにさん
- LoRaWAN の地域パラメータのうち、アジア・オセアニア向けの周波数プランです。日本国内向けは AS923-1 を使い、920MHz帯で運用します。欧州向けの EU868、北米向けの US915 とはチャンネル配置が異なり、設定を変えただけでは日本では合法になりません(技適が別途必要)。
- 920MHz帯きゅうにひゃくメガヘルツたい
- 日本でLoRaWANに割り当てられている周波数帯です。免許不要の特定小電力無線局として使えます。同じ帯域を Wi-SUN、EnOcean(928MHz)、電力スマートメーターなども使うため、混信を前提とした設計が必要です。
- ARIB STD-T108エーアールアイビー エスティーディー ティー108
- 920MHz帯の無線設備に関する標準規格です。キャリアセンス(LBT)や送信時間の制限などが定められており、国内向けLoRaWAN機器はこれに適合している必要があります。
- LBTエルビーティー(キャリアセンス)
- Listen Before Talk。送信する前に、そのチャンネルが空いているか確認する仕組みです。920MHz帯では原則としてこの動作が求められます。混んでいる環境では送信が待たされるため、大量のセンサーを詰め込むと取りこぼしが起きます。
- 特定小電力無線局とくていしょうでんりょくむせんきょく
- 免許も登録も不要で使える無線局の区分です。送信出力に上限があり、920MHz帯のLoRaWANセンサーは通常この区分で運用します。出力を上げる区分は登録局扱いとなり、別の手続きが必要です。
- バンド違い
- 欧州向け(EU868)や北米向け(US915)の機器を、そのまま日本に持ち込んでしまうこと。型番末尾の
-868M/-915Mがバンドを示します。安価な海外通販で買った機器が使えない原因のほとんどがこれです。
デバイスクラス
- クラスAクラスエー(Class A)
- 最も省電力なモード。デバイスが送信した直後にだけ、短い受信窓を2回開くという動作をします。サーバーからの指示(ダウンリンク)はこの窓でしか届かないため、反応までセンサーの送信周期ぶん待つことになります。電池駆動センサーの標準はこれです。
- クラスBクラスビー(Class B)
- ゲートウェイが発信するビーコンに同期し、定期的に受信窓を開くモードです。クラスAより下りの応答が早く、クラスCより省電力ですが、対応機器が少なく実装例はあまり多くありません。
- クラスCクラスシー(Class C)
- 送信中以外はつねに受信し続けるモード。ダウンリンクがほぼ即座に届く代わりに、電池では持たないため外部電源が前提です。照明制御やバルブ開閉などのアクチュエータ用途はクラスC一択です。
参加・認証
- OTAAオーティーエーエー
- Over The Air Activation。あらかじめ登録した DevEUI / JoinEUI / AppKey をもとに、無線で参加手続きを行いセッション鍵を毎回生成する方式です。安全性と運用性の面から原則こちらを使います。
- ABPエービーピー
- Activation By Personalization。セッション鍵を機器に直接焼き込んでおく方式です。参加手続きが不要な代わりに、フレームカウンタの管理を誤ると通信できなくなる事故が起きがちです。
- DevEUIデブイーユーアイ
- 機器ごとに固有の64ビット識別子。MACアドレスのようなものです。これがないとネットワークサーバーに登録できません。
- JoinEUIジョインイーユーアイ(旧 AppEUI)
- どのJoinサーバーに参加要求を送るかを示す64ビット識別子。LoRaWAN 1.0系では AppEUI と呼ばれていました。
- AppKeyアップキー
- OTAA の参加手続きで使う128ビットの共通鍵。DevEUI と AppKey の一覧(キーリスト)はメーカーから受け取る必要があり、これが揃わないと機器を登録できません。発注時の必須確認事項です。
- DevAddrデブアドレス
- 参加後のセッション中に使われる32ビットのアドレス。IPアドレスに相当します。
- NwkSKey / AppSKeyネットワークセッションキー/アプリケーションセッションキー
- 参加後に生成される2種類のセッション鍵。前者は通信の完全性(改ざん検知)、後者はペイロードの暗号化に使われます。ペイロードの中身はネットワーク事業者にも見えない設計です。
電波設計・チューニング
- SF(拡散率)エスエフ(Spreading Factor)
- SF7〜SF12の範囲で設定します。数字が大きいほど遠くまで届く代わりに、通信が遅くなり電池も食います。SF12 では1回の送信に1秒以上かかり、送れるペイロードも十数バイト程度に制限されます。
- ADRエーディーアール(Adaptive Data Rate)
- ネットワークサーバーが受信品質を見て、各デバイスのSFと送信出力を自動で最適化する仕組みです。固定設置の機器では必ずONにします。逆に、移動する機器では品質が変動して収束しないためOFFにします。
- データレートDR(Data Rate)
- SFと帯域幅の組み合わせに番号を振ったもの。DR0が最も遅く(SF12)、番号が大きいほど高速です。ADRはこの値を上下させて調整します。
- RSSIアールエスエスアイ
- 受信信号強度。単位はdBmで、0に近いほど強い(例:-70dBmは良好、-120dBmは限界付近)。設置場所の良し悪しを判断する第一の指標です。
- SNRエスエヌアール
- 信号対雑音比。LoRaはSNRがマイナスでも復調できるのが強みで、-20dB付近まで通信できます。RSSIが弱くてもSNRが確保できていれば通ることがあります。
- リンクバジェット
- 送信出力からアンテナ利得・損失を差し引き、受信感度までにどれだけ余裕があるかを計算したもの。設計段階で通信可否を見積もるために使います。
- フレネルゾーン
- 送受信間の電波が通る楕円形の領域。見通しが取れていても、この領域が障害物で塞がれると急激に減衰します。屋外の長距離リンクではアンテナ高さの設計に効いてきます。
- 通信距離つうしんきょり
- カタログには「最大15km」などと書かれますが、これは理想条件での値です。実務上の目安は市街地で1〜2km、郊外や見通しの良い環境で5〜10km程度。建物内では階数・躯体・什器で大きく変わるため、提案前に必ず現地でサイトサーベイ(電波調査)を行ってください。
- サイトサーベイ
- 実機を持ち込んで、実際に電波が届くかを測る現地調査。LoRaWAN案件で最も省いてはいけない工程です。ゲートウェイ1台とセンサー数台で半日程度が目安です。
データの流れ
- ゲートウェイGW
- センサーの電波を受けて、インターネット経由でネットワークサーバーへ中継する装置。ゲートウェイ自身は判断をせず、デバイスもゲートウェイに「接続」しません。デバイスはただ電波を撒き、届いた範囲のゲートウェイがすべて拾います。
- LNSエルエヌエス(LoRaWAN Network Server)
- LoRaWANの中核となるサーバーソフト。複数ゲートウェイが受けた同じパケットの重複除去、ADRの制御、鍵の管理を担当します。ChirpStack、The Things Stack、Milesight IoT Cloud などがあります。
- アップリンク
- デバイス → サーバー方向の通信。センサーの計測値はこちらで送られます。
- ダウンリンク
- サーバー → デバイス方向の通信。設定変更や制御指示に使います。クラスAでは送信直後の受信窓でしか届かないため、「送信間隔を1時間に設定したセンサーは、設定変更が最大1時間先まで反映されない」という挙動になります。
- ペイロード
- 実際に運ばれるデータ本体。LoRaWANでは数バイト〜数十バイトと非常に小さく、JSONのような冗長な形式は使えません。
- ペイロードデコーダ
- メーカー独自のバイナリ形式を、温度・湿度といった数値に変換するJavaScriptコード。メーカーが配布しているものをネットワークサーバーに登録して使います。これを入れないと16進数の羅列しか見えません。
- Cayenne LPPカイエン エルピーピー
- ペイロードの汎用フォーマットのひとつ。デコーダを書かずに済むのが利点ですが、Milesight など多くのメーカーは独自のTLV形式を採用しています。
- FPortエフポート
- ペイロードの用途を区別する1バイトの番号。同じデバイスから「計測値」と「設定応答」を送り分けるときなどに使われます。
- MQTTエムキューティーティー
- 軽量なメッセージ配信プロトコル。ネットワークサーバーから上位システムへデータを渡す標準的な出口です。Node-RED やクラウドサービスの多くがこれで受け取ります。
- Node-REDノードレッド
- ブラウザ上でブロックを繋いで処理を組み立てるツール。Milesight UG65 などのゲートウェイには内蔵されており、受信したデータの加工・転送・簡単な制御をゲートウェイ内で完結できます。
運用・その他
- パケットフォワーダ
- ゲートウェイ上で動き、受信した電波をネットワークサーバーへ転送するソフト。従来の Semtech UDP 方式と、暗号化とWebSocketに対応した Basics Station 方式があります。
- 受信ウィンドウRX1 / RX2
- クラスAのデバイスが送信後に開く2つの受信窓。RX1は同じチャンネル、RX2は固定のチャンネル・データレートで開きます。ダウンリンクが届かないトラブルの多くはRX2の設定不一致が原因です。
- FUOTAフオタ
- Firmware Update Over The Air。無線経由でデバイスのファームウェアを更新する仕組みです。LoRaWANの帯域では非常に時間がかかるため、実運用ではまだ限定的です。
- マルチキャスト
- 複数のデバイスに同じダウンリンクを一斉送信する仕組み。多数の照明を同時制御する用途などで使われます。
- パブリック網 / プライベート網
- キャリアや事業者が提供する共用のLoRaWAN網を使うか、自社でゲートウェイを設置するか。工場・倉庫・ビルなど敷地が限定される案件では、プライベート網(自社GW)が圧倒的に一般的です。
- ChirpStackチャープスタック
- オープンソースのLoRaWANネットワークサーバー。無償で自社サーバーに構築でき、自由度が高い反面、運用は自前になります。
- The Things Stackザ・シングス・スタック(TTN/TTI)
- コミュニティ版(TTN)が無償で使えるネットワークサーバー。検証や小規模PoCでよく使われます。
- IP65 / IP67アイピー65/アイピー67
- 防塵・防水の保護等級。屋外設置のセンサーやゲートウェイではIP65以上が目安です。IP67は一時的な水没にも耐えます。
- 電池寿命でんちじゅみょう
- LoRaWANセンサーの多くは単3リチウム電池で数年〜10年を謳いますが、これは送信周期を長め(例:1時間ごと)に設定した場合の値です。1分ごとに送れば当然もちません。要件と電池寿命はトレードオフです。
- デューティサイクル
- 単位時間あたりに電波を出してよい時間の割合。欧州では法的な上限がありますが、日本ではARIB STD-T108で送信時間に関する制限が定められています。センサーを大量に配置する際は設計上の制約になります。
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最終更新:2026年8月13日
