はじめに:なぜ今、在席検知センサーなのか?
新型コロナウイルスの流行をきっかけに、私たちの働き方は大きく変わりました。テレワークやフレックスタイム制の普及により、オフィスは「毎日通う場所」から「必要に応じて使う場所」へと役割を変えつつあります。その結果、企業にとってオフィススペースの「稼働率」や「利用実態」を把握することが、かつてないほど重要になっています。

特に、フリーアドレス化されたオフィスやシェアオフィスでは、「どの席が空いているのか」「会議室は本当に予約通り使われているのか」「無人のスペースに空調や照明がついたままではないか」といった課題が日常的に発生しています。これらの課題は、無駄なコストや非効率なスペース運用を引き起こし、結果として従業員の満足度や生産性にも影響を及ぼします。
そこで注目されているのが、在席検知センサーです。
在席検知センサーは、デスクや会議室、共有スペースなどに人が「実際にいるかどうか」を検知・可視化することで、オフィスの利用状況をリアルタイムに把握できるソリューションです。人感センサー、画像解析、温度検知などの技術を活用し、スペースの最適化やエネルギー効率の向上、ひいては働き方改革の実現を支援します。

今後さらにハイブリッドワークが進む中で、在席検知は単なる設備管理の枠を超え、組織の意思決定や戦略的な空間設計のための重要なインフラになっていくでしょう。
本記事では、特に注目されている2つの在席検知センサー「Milesight VS121-P」と「Optex CPD(EnOcean対応)」を取り上げ、それぞれの特長やユースケース、導入時のポイントについて詳しくご紹介していきます。
在席検知センサーとは?
在席検知センサーとは、特定の空間に「人がいるかどうか」をリアルタイムで検知するためのセンサーデバイスです。オフィスのデスク、会議室、ラウンジスペースなどに人が「在席している状態」か「空いている状態」かを、目視や打刻なしで自動的に検出し、可視化・記録します。

このセンサーの導入により、「席が空いていると思ったら実は荷物だけ置いてあった」「会議室の予約はあるのに誰も使っていない」などの利用状況の“見えないムダ”を排除し、空間の有効活用を促すことができます。
主な検知技術の種類
在席検知センサーには、以下のような技術が用いられています:
技術 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
人感センサー(赤外線/熱感知) | 人の体温や動きを感知して在席を判断 | 小型・省電力・設置が簡単 |
画像解析(AIカメラ) | カメラで撮影した映像をAIで解析し、人数や動きを把握 | 精度が高く、ゾーン管理にも対応 |
CO₂・振動センサー | 空間の二酸化炭素濃度や机の振動から在席状況を推定 | 補助的用途が多い |
ビーコン/Bluetooth方式 | スマートフォンやタグを使って人の位置を測定 | 個人識別が可能だが、端末携帯が前提 |
このように、技術の選定によって、対象とする空間の広さ・精度・設置の手間・プライバシー保護の度合いが変わってきます。たとえば、画像解析型は広範囲を高精度にカバーできますが、カメラ設置や電源供給が必要になります。一方、熱感知型は配線不要という利便性があります。
センサー導入のメリット
- リアルタイムでの空席可視化 → 無駄な席探しの時間を削減
- オフィススペースの最適化 → 利用実態に基づいたレイアウト改善やコスト削減が可能
- 省エネ・自動制御との連携 → 空室時の照明・空調の自動オフで電力コスト削減
- 働き方データの蓄積・分析 → ワークスタイルの変化やオフィス需要の分析材料に
本記事では、このような役割を果たす在席検知センサーの中でも、AI画像解析を用いた「Milesight VS121」と、配線不要の温度感知型「Optex CPD」という、性質の異なる2製品を詳しく比較・解説していきます。
次章では、それぞれの製品の特長と活用シーンについてご紹介します。
製品紹介:Milesight VS121-P(PoE対応モデル)

在席検知の高度化に伴い、オフィスや商業施設では高精度・高信頼性のセンサー導入が求められるようになっています。その中で、AI画像解析技術とPoE給電機能を備えた「Milesight VS121-P」は、広範囲空間のスマートな在席検知ソリューションとして高い評価を受けています。
製品概要
Milesight VS121-Pは、通常モデル「VS121」がLoRaWANを使った無線タイプに対し、PoE(Power over Ethernet)給電に対応しているのが最大の特長です。ネットワークケーブル1本で通信と電源供給を同時に実現できるため、電源工事不要で安定した常時稼働が可能です。

AI搭載のカメラセンサーにより、最大16のゾーンごとの人数をリアルタイムにカウントし、詳細な利用状況をクラウドやオンプレミス環境で可視化できます。
主な特長(VS121-P)
特長 | 内容 |
---|---|
AIによる人体検知と人数カウント | 98%以上の精度でリアルタイムカウントが可能 |
最大8ゾーンを同時検知 | オフィス・会議室・公共空間など広い範囲に対応 |
PoE対応 | LANケーブル1本で給電+通信、設置の自由度が高い |
エッジAI処理&プライバシー配慮 | 画像データを保存せず、デバイス内で匿名処理 |
クラウド/ローカル連携 | MQTTやHTTP APIで既存システムと柔軟に統合可能 |
設置は天井または壁面 | 高所からの検知に最適な設計で、死角が少ない |
利用シーン例
スマート会議室管理
- 「使われた会議室」と「使われなかった予約」を可視化
- 予約と実利用の乖離を減らし、リソースの適正配分へ
■ フリーアドレスオフィスのゾーン活用
- オフィス空間を複数ゾーンに分割し、それぞれの在席率を把握
- 混雑の傾向を分析し、レイアウトや配置変更の検討に活用
■ 商業施設・空港ラウンジなどの混雑状況可視化
- 匿名で人数だけを正確に把握し、案内表示や案内ロジックと連携
PoE+AI=高信頼な常時モニタリング
VS121-Pは、PoE対応により安定した電源供給とシステム信頼性の向上が期待できるほか、ネットワーク経由でのファームウェアアップデートや設定変更も容易に行えます。
また、画像は録画・保存されない設計のため、プライバシーやセキュリティ要件の厳しい環境にも対応可能です。スマートビル管理や自治体施設など、公的機関での活用にもお勧めです。
次は、省エネ・省スペース・完全ワイヤレスを実現した「Optex CPD(EnOcean対応)」についてご紹介します。コンパクトかつ低消費電力の対極的なアプローチを持つ製品としておすすめの製品です。
製品紹介:Optex CPD(EnOcean対応)

天井設置のAIカメラ型センサーと比べて、より小規模・ピンポイントな在席検知に強みを持つのが「Optex CPD」です。Optex CPDは、EnOcean規格対応のパッシブサーマル方式センサーであり、完全ワイヤレスかつ電池駆動で動作することが最大の特長です。
製品概要

Optex CPDは、テーブルの下などに設置して、限られた空間に人がいるかどうかを検知するセンサーです。焦電式(赤外線)センサーに代わるパッシブサーマル技術を採用し、人の微妙な体温やわずかな動きも検知可能。特に、1〜2名席のような狭小エリアにおける在席判定に高い精度を発揮します。
通信には、配線不要・省電力で知られるEnOcean規格を採用。電源工事不要で簡単に導入でき、電池寿命は約5年と長く、メンテナンスも最小限で済みます。
主な特長
特長 | 内容 |
---|---|
EnOcean通信対応 | 無線通信の国際規格で、配線不要&省電力 |
パッシブサーマル方式 | 微細な動きや温度の変化を検知しやすく、1名席でも高精度 |
誤検知が少ない | 検知エリアが限定されており、通行人などを誤検知しない |
簡単設置 | 両面テープでテーブル下に貼り付け、ワンプッシュで設定可能 |
電池駆動(約5年) | メンテナンスフリーで運用負担を軽減 |
軽量&スリムデザイン | オフィス空間に自然に溶け込むコンパクト設計(約70g) |
利用シーン例
■ フリーデスクの空席管理
テーブル下にセンサーを貼り付けるだけで、リアルタイムに席の利用状況を可視化。モバイルアプリやデジタルサイネージとの連携で、社員の席探しを効率化できます。
■ 小会議室や1人用ブースの管理
1〜2名向けのミーティングブースや集中ブースの利用有無を検知。予約と実利用のギャップを埋め、稼働率の改善につながります。
■ スマートビル・省エネ制御
空席状態を検知して、自動的に照明や空調をOFFにする制御システムと連携。エネルギーコスト削減に寄与します。

EnOcean+電池駆動による“究極の手軽さ”
Optex CPD最大の強みは、インフラに依存せず、どこにでも設置できる柔軟性です。電源工事や配線が不要なため、既存のオフィスや一時的なレイアウト変更にも柔軟に対応可能です。また、EnOcean通信は低消費電力で、ビル管理システムとの連携実績も豊富。スモールスタートから全社展開までスムーズに対応できます。
次章では、ここまでご紹介した2製品の特性を整理し、それぞれが適する利用シーンや導入方針を比較表で分かりやすくご紹介します。
VS121-PとCPDの比較:どちらを選ぶべきか?
ここまで紹介してきた「Milesight VS121-P」と「Optex CPD(EnOcean対応)」は、どちらも優れた在席検知センサーですが、その設計思想・対象用途・導入規模には大きな違いがあります。
オフィスの利用実態や導入目的に応じて、どちらのセンサーを選ぶべきか検討するために、それぞれの特長を以下のように比較してみましょう。
項目 | Milesight VS121-P | Optex CPD(EnOcean対応) |
---|---|---|
検知方式 | AI画像解析(人体認識) | パッシブサーマル(温度感知) |
検知範囲 | 最大16ゾーンを同時検知(広範囲) | 狭小範囲(1〜2名席向け) |
設置場所 | 天井・壁(高所) | テーブル下など(低所) |
電源供給 | PoE(LANケーブル給電) | 電池駆動(約5年) |
通信規格 | TCP/MQTT | EnOcean |
設置の手軽さ | 専門工事が必要な場合も | 工具不要、両面テープで簡単設置 |
プライバシー対応 | 画像保存なし・匿名処理 | カメラ非搭載、安心感が高い |
おすすめ用途 | 会議室、オフィス全体、ゾーン管理 | フリーアドレス席、小ブース、シェアデスク |
選定のポイント
- 広範囲・高精度・ゾーン分析をしたい場合は、「Milesight VS121-P」がベスト。会議室やオフィス全体の稼働率可視化に適しています。
- コンパクトなスペースの管理や、手軽さ・導入スピードを重視する場合は、「Optex CPD」が最適です。配線不要で設置も簡単なため、小規模オフィスや一時的なレイアウトにも柔軟に対応できます。
- プライバシー重視の環境では、どちらも画像記録を行わず、匿名処理やOptex CPDは非カメラ型のため安心して導入できます。
まとめ:空間の“見える化”が未来の働き方を支える
オフィスの在り方が大きく変わりつつある今、「空間の使われ方をデータで把握する」ことの重要性はこれまでになく高まっています。固定席の時代には見えにくかった「使われていないスペース」「予約されているだけの会議室」「実は足りていないブース」などの利用実態のギャップが、企業のコストや生産性に大きく影響を与えています。
本記事でご紹介した2種類の在席検知センサー:
- Milesight VS121-P(AI画像解析+PoE対応)
- Optex CPD(EnOcean対応)(省電力・テーブル下設置)
はいずれも、空間の“見える化”を実現し、スマートで柔軟な働き方の実現を支援するツールです。それぞれに異なる強みを持ち、目的や設置環境によって最適な選択肢は変わってきます。
たとえば:
- 広範囲をカバーして全体最適を目指すなら VS121-P
- 手軽にスモールスタートしたいなら CPD
といった具合です。また、これらを組み合わせて導入することで、オフィス全体と個別席の両方を網羅したハイブリッドな運用も可能になります。
最後に:次のアクションへ
在席検知センサーは、単なる「人がいる/いない」の情報以上に、職場の稼働率や働き方の質を向上させるための経営資産になり得ます。
もし貴社が、
- オフィススペースの見直しを検討中
- ハイブリッドワークの最適化を図りたい
- 設備の省エネやコスト削減を狙いたい
とお考えであれば、ぜひ一度、在席検知センサーの導入をご検討ください。
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