Node-REDのnode-red-contrib-bacnetを使って、CoolMasterのON/OFFを行う方法を調べます。
YABEのデータ
YABEを使ってCoolMasterを調べると、
L1.101 on/off（BV:256）がオンオフを制御するデータポイントのようです。
Present Valueが１となっていて、現在稼働中です。
Present Valueを0にすることでCoolMasterに接続された空調機（旧東芝キャリア）の電源もオフになりました。
Node-REDからON/OFFの状態を取得する
このようなフローを作成します。
TypeにはBV(BinaryValue)を意味する５
InstanceはBV:256に設定。
Deviceha接続するCoolMasterのIPアドレス。Client はNode-REDを動かすＰＣのＩＰを入れます。
実行すると
ValuesのValueが１で空調機が動いていることを確認。
空調の電源をオフにして再度実行。
Valueが０になりオフになったことが確認できました。
Node-REDからBACnetのONをにしてみる
BACnet WriteノードをつかってONにするフローを作成しました。
プロパティはReadと同じように設定。
このようにしたところ
型が合わないというエラーが出ました。
ON/OFFはBooleanだと思って
App-Tagを１にしたのですが、違うようです。
WireSharkで確認
YABEを使ってL1.101 on/off（BV256）を0にしてWiresharkでパケットを取得します。
Wireshark側ではこのようにパケットがキャプチャされました。
Frame 202: 65 bytes on wire (520 bits), 65 bytes captured (520 bits) on interface \Device\NPF_{0F0CA621-1947-4E3A-81CB-D5506A2CE640}, id 0
Section number: 1
Interface id: 0 (\Device\NPF_{0F0CA621-1947-4E3A-81CB-D5506A2CE640})
Encapsulation type: Ethernet (1)
Arrival Time: Jun 9, 2025 18:54:29.258290000 東京 (標準時)
UTC Arrival Time: Jun 9, 2025 09:54:29.258290000 UTC
Epoch Arrival Time: 1749462869.258290000
[Time shift for this packet: 0.000000000 seconds]
[Time delta from previous captured frame: 0.010301000 seconds]
[Time delta from previous displayed frame: 0.000000000 seconds]
[Time since reference or first frame: 9.533515000 seconds]
Frame Number: 202
Frame Length: 65 bytes (520 bits)
Capture Length: 65 bytes (520 bits)
[Frame is marked: False]
[Frame is ignored: False]
[Protocols in frame: eth:ethertype:ip:udp:bvlc:bacnet:bacapp]
[Coloring Rule Name: UDP]
[Coloring Rule String: udp]
このデータをChatGPTに開設してもらいます。
Frame 202: 65 bytes on wire (520 bits)
- このパケットは物理層で 65バイト（520ビット） です。
- イーサネットの最小パケットサイズ（60バイト）に近いので、制御や短いデータ（小さいリクエストパケット）の可能性があります。
🟢 Interface id: 0 (\Device\NPF_{…})
- このパケットは、Wiresharkが使用しているネットワークインターフェイス（例: 有線LAN、仮想ネットワークカード）上でキャプチャされました。
- そのIDが
0F0CA621-1947-4E3A-81CB-D5506A2CE640です。
🟣 Arrival Time
- ローカル時間（東京標準時）: 2025年6月9日 18:54:29.258
- UTC時間: 2025年6月9日 09:54:29.258
- 参考：Epoch（秒数）: 1749462869.258
これは解析時にタイムラインを確認するのに便利です。
🔵 Frame Length / Capture Length
- 65 bytes = 520 bits
- Frame Length: パケット全体の物理長
- Capture Length: Wiresharkが実際に取り込んだ長さ（ここでは同じ）
🟡 Protocols in frame
eth:ethertype:ip:udp:bvlc:bacnet:bacapp- Ethernet → IP → UDP → BACnet/IP（bvlc）→ BACnet Application（bacapp）
- Node-REDのBACnet-Writeノードで送信したか、デバイスが応答したBACnet/IPパケットだと思われます。
Building Automation and Control Netwokr NPDUについて確認します。
🔎 NPDUとは？
NPDU（Network Protocol Data Unit） は、BACnetプロトコルスタックの中で「ネットワーク層」に相当する部分のデータ単位です。
BACnet/IPやMSTPなど、BACnetの通信プロトコルで必ず使用されるデータ構造で、BACnetパケットの配送先（アドレス情報）や制御フラグ、後続のAPDU（Application Protocol Data Unit）を包含します。
BACnetはOSI参照モデルをベースに設計されていて、簡略化するとこんなイメージです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| バージョン | BACnetプロトコルのバージョン番号（通常1） |
| 制御フラグ | メッセージの種別（例: ネットワーク層だけ or アプリケーション層まで含む） |
| DNET（宛先ネットワーク） | 宛先BACnetネットワーク番号（ルーター経由の場合） |
| DLEN（宛先MAC長） | 宛先MACアドレス長 |
| DADR（宛先MACアドレス） | 宛先MACアドレス（BACnet/IPならIP＋ポート） |
| SNET（送信元ネットワーク） | 送信元BACnetネットワーク番号 |
| SLEN（送信元MAC長） | 送信元MACアドレス長 |
| SADR（送信元MACアドレス） | 送信元MACアドレス |
| Hop Count | ルーティングのホップ数（デフォルト255） |
| APDU | BACnet Application Protocol Data Unit（BACnetの実データ） |
🛠️ NPDUの役割
- ルーティング: BACnet/IPだけでなく、MSTPやARCNETなど異なるネットワーク間でもBACnetルーターでNPDUを中継します。
- アドレス情報: 宛先や送信元のBACnetネットワーク情報を含めることで、異なる物理ネットワーク間でBACnet通信が可能になります。
- アプリケーション層の包み紙: NPDUの中にAPDU（データ操作コマンドやオブジェクトデータ）を格納して送信します。
以上のようにNPDUはネットワークに関するデータのようなので、先ほどのNode-ＲＥＤで発生したエラーは次のAPDUを調べればわかりそうです。
APDUについて
Building Automation and Control Network APDU
0000 .... = APDU Type: Confirmed-REQ (0)
.... 0000 = PDU Flags: 0x0
.... 0... = Segmented Request: Unsegmented Request
.... .0.. = More Segments: No More Segments Follow
.... ..0. = SA: Segmented Response not accepted
.111 .... = Max Response Segments accepted: Greater than 64 segments (7)
.... 0101 = Size of Maximum ADPU accepted: Up to 1476 octets (fits in an ISO 8802-3 frame) (5)
Invoke ID: 13
Service Choice: writeProperty (15)
ObjectIdentifier: binary-value, 256
Context Tag: 0, Length/Value/Type: 4
0000 0001 01.. .... .... .... .... .... = Object Type: binary-value (5)
.... .... ..00 0000 0000 0001 0000 0000 = Instance Number: 256
Property Identifier: present-value (85)
{[3]
Present Value (enum index): 0
Application Tag: Enumerated, Length/Value/Type: 1
}[3]
.... 1... = Tag Class: Context Specific Tag
0011 .... = Context Tag Number: 3
.... .111 = Named Tag: Closing Tag (7)
Priority: (Unsigned) 16
Context Tag: 4, Length/Value/Type: 1
.... 1... = Tag Class: Context Specific Tag
0100 .... = Context Tag Number: 4
Length Value Type: 1
このAPDUはBACnetクライアントからデバイスに送信される「writeProperty」リクエストです。
📦 まず全体像
このパケットはBACnet/IP通信でよく見られる Confirmed-REQ (0)（アプリケーション層の確認応答付きリクエスト）です。
サービス要求内容は「binary-valueオブジェクト（インスタンス256）のpresent-valueを書き込みたい」です。
🔹 APDU Type: Confirmed-REQ (0)
- 意味: BACnetのAPDUタイプは4種類あります。
- 0: Confirmed Request（応答を期待する）
- 1: Unconfirmed Request（応答不要）
- 2: SimpleACK（成功応答）
- 3: ComplexACK（成功応答・分割）
- 4: SegmentACK（分割応答）
- 5: Error（エラー応答）
- 6: Reject（拒否応答）
- 7: Abort（中止応答）
- ここでは Confirmed Request なので、デバイスからACKが必要です。
ここにConfirmedRequestが表示されています。
🔸 PDU Flags: 0x0
各ビットの意味：
- Segmented Request: Unsegmented（分割なし）
- More Segments: No More Segments Follow（最後のセグメント）
- SA: Segmented Response not accepted（分割応答不要）
🔹 Max Response Segments accepted: 7
- クライアントがデバイスに対して「最大何個のセグメントなら受け取れるか」を伝えています。
- 7 → 「64セグメント以上OK」
途中いろいろ省略
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| APDU Type | Confirmed Request（応答必要） |
| Service | writeProperty（プロパティ書き込み） |
| Object | binary-value, Instance=256 |
| Property | present-value（85） |
| Value | 0（inactive） |
| Application Tag | Enumerated（整数型） |
| Priority | 16（最低優先度） |
という状況でした。
Node-REDのコマンドをWireSharkでキャプチャ
コマンドをおくりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 送信元 | 192.168.1.14（Node-REDやBACnetクライアント） |
| 送信先 | 192.168.1.100（BACnetデバイス） |
| プロトコル | BACnet/IP（UDP 47808） |
| BVLC Function | Original-Unicast-NPDU（単一デバイス宛） |
| APDU Type | Confirmed Request（応答が必要） |
| サービス | writeProperty（プロパティ書き込み） |
| オブジェクト | binary-value（256） |
| 書き込み先 | present-value（85） |
| 書き込み値 | True（bool） |
| Priority | 16 |
⚠️ 注意点
もしここでBACnetデバイスから Error Class: PROPERTY (2) Code: INVALID_DATA_TYPE (9) のようなエラーが返る場合、原因として：
- 実は binary-value.present-value が Enumerated（0 or 1）として実装されているデバイスの場合。
- → Application Tag を Enumerated（App-Tag=9）にしなければならない。
- デバイスがBoolean型をサポートしていない場合。
- → Application Tag を変更する必要がある。
とのメッセージ。
App-Tagを9:ENUMERATEDに変更して実行
無事に空調機をBACnetからONにすることができました。
Node-REDからBACnetでCoolMasterのON/OFFをする方法
単純にON/OFFするには、App-Tagを９にして、Valueを０と１のBACnet Writeノードをつなげればよい。
でも、これはValueで渡したいですよね。
Node-REDからValueで渡してBACnetでON/OFFする方法
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フローはこのとおり
InjectノードではON:1、OFF:0にします。
msg.payload = {
values: [
{
type: 9,
value: msg.payload
}
]
};
return msg;
Functionノードには、TYPEはApp-Tagの値で９：Enumerated。
送る値はmsg.payloadで渡しています。
BACnet WriteノードはApp-Tagを空にするとエラーがでるのでこのようにします。
ちなみに、ここにApp-Tagを記載しても、Functionノードから送られる値に上書きされるので、ここはなんでも大丈夫そうです。
まとめ
以上、Node-REDからCoolMasterにBACnetでON/OFFする方法をご紹介しました。
値を動的に送る際のフォーマットがわからず、ここでかなり時間を費やしました。